争いは

つづく

日記15

3時50分のアラームで目を覚ますと、自室の電気が点けっぱなしだった スマホの充電も忘れているし、コップにはお茶がなみなみ入ったまま 完全に寝落ちです 最悪だ〜〜

目を覚ました瞬間は夢を覚えていたので、きっと眠りの浅いタイミングだったのだと思うが、どうも寝た気がせず、起き上がるのがいつもより2割増くらいでだるかった ぼんやりしながら服を着替え、朝イチの用を足しながら歯を磨く 洗面所で口をゆすいだらついでに髪の毛を少し濡らして、自室に戻って髪を軽くブローする 寝癖を整えたあとリビングに移動する前に(化粧道具はリビングにある)、気持ちを切り替えるべく、つかのまのリフレッシュとしてX(Twitter)をチラと見る その一連がルーティンのようになっている おすすめタブのポスト(ツイート)にざっと目を通すと、いつもならそれで(よし。)となるのに、今度は物足りないきもちだった 仕方がないので、おすすめのトレンドを覗いてみる え、なんか「カメムシ」の4文字があるんですけど しかも近畿地方のトレンドである いや…

おれはカメムシが苦手です なんかあのフォルムの角張り方とか、色とか、習性?とか それぞれの概念を個別に嫌ってるわけじゃないけど、これらが合体したカメムシに対しては異様な嫌悪感を抱いてしまう 1年ほど前になるのか、家に一匹のカメムシが入ってきて、そこからしばらくの間、ひとつ屋根の下奴と寝食を共にすることとなった とはいえ奴は、リビングの天井の照明のカバーの内部に入り込んでカバーの円形に沿うようにしてぐるぐる徘徊するうちに次の日くらいには死んでしまっていたのだが 誰も死骸を除こうとはしなかった 電灯の寿命が切れるまで、緑ぼやはなんとも不快な存在感をまとっておれたちの頭上に転がったままだった

また入ってきたらどうしよう リビングの照明のカバーが壊れ、今はLEDがむき出しの状態であるので、部屋に入ってこられたらもうなすすべが何もないのである そうなったら途方に暮れてしまうぞ そんな事を考えながらカメムシに関するツイートを引き続き見ていると、大量発生という旨の他に、「夜中に部屋の電気をつけてるとやつらが集まってくる」みたいな文言を目にした あーーーーーーーー 終わった もう、完全におれやん おれの部屋の窓に、カーテンの外に、へばりついてるやん絶対に ああ 無理 生きていけない生きていけない 絶望

生きていくのが嫌になりすぎて、いつもより動きが緩慢になっていた気がする それでもバイトを飛ぶわけにはいかないおれは、ギリギリの時刻に用意を済ませ、自らを奮い立たせて玄関に立った ふー… ドアを開ける そして、恐る恐るマンションの通路側に面した自分の部屋の窓の方に目をやる すると、そこには、緑の集合がいなかった あー安心安心!よかったよかった!

結局その日はカメムシを目にすることはなかったが、バイト先に向かう道中など、飛んできたカメムシが自分の服にくっついたら…といういらぬ想像をしてしまい、そういう場合のあまりのなす術のなさにひたすら無意味に絶望していた

 

バイト中、どこかから変な声が聞こえてきた 小さい子が泣き喚いているような声だった 最初は子連れの親子がその辺にいるのだろうと思っていたが、エンドレスである 辺りを見ても誰も声を気にしていないようで、もしかしたら自分だけに聞こえているのでは…?と不安になった

もずくの品出しを終えた後は、加工品の売り場で他の人たちと一緒に調味料を出すことに 売り場を移動してからも変な声はおれにはずっと聞こえたままだった 奇妙に思っていると、少し離れた調味料の売り場から戻ってきたパートさんが「なにこの声?」と言った 「なんか聞こえますよね!ずっと聞こえるんですけどなんなんですかね、赤ちゃんみたいな……」「え?わたしおっさんの声に聞こえるねんけど」「え!?」 そうこうしているうちに退勤の時間になり、結局声の正体の分からないままこの日のバイトは終了した

バイト後は妹が職場のある場所まで来たので一緒にお昼ごはんを食べたりした ケンタッキーのチーズ月見和風カツのやつ(ボックス) おいしかった 非バーガーのチキンが骨のついたやつだったんだけど、おれのは軟骨だったのでまるごと全部食べられてうれしかった 食べた後、適当に店内をぶらつきながらその日の朝からのことを話す中で、バイト中の変な声を思い出した 妹にも聞かせようと我が職場・スーパーに案内した

しかし、昼頃になり客が増えたためか、店内は朝おれが働いていたときよりもガヤガヤしていて、あらゆる音声が聞こえにくい状態になっていた 妹に聞かせたい音声はさっきの変な声の他にもいくつかあった ひとつは、そのへんな声 ふたつめは、レディミール売り場で最近流れるようになった、うっとうしい、なんかBGMの歌が「おっぱいおっぱい」と言っているように聞こえるプロモーションビデオ、あともうひとつは、やきいも売り場を通ったらその度に流れる変な曲

順路的にふたつめの場所が一番はじめに通るところだったのだが、ガヤガヤしすぎてなんもわからんかった 悔しい 2番目がやきいもゾーンで、それに関してはちゃんと聞こえてよかった 歌詞もメロディもやっぱり変でお互い爆笑した そして最後があの変な声である ガヤガヤしているためか、なかなか声を見つけ出すことができない そうしてキョロキョロしていると、先に声の正体らしきものが見つかった 肉のプロモーションビデオで、アメリカンなイメージで、男の人の声がテンション高く「ビーーーーーフ!」などと言ってるやつである バイト中に聞こえた変な声にも波があり、おれには赤ちゃんがこれでもか!というほどに泣いているように思われた部分が、おそらく、「ビーーーーーフ!」の部分だった 興ざめ しかも、声の正体が先にわかっちゃったから、音声が聞こえるようになってももうそのビーフにしか認識できないわけ 二度と赤ちゃんの泣き声には聞こえなかったわけ 本当に、残念だった 妹にはかなりバカにされた なんでパートさんにはちゃんとおっさんの声に聞こえてたのにおれには赤ちゃんのようにしか聞こえなかったんだろう 青黒/白金のドレス、撮ったのかよ/エーアイアイしかり、認識とは不思議なものである

 

そういう1日でした