争いは

つづく

無題8

自転車に乗って信号待ちをしていると、同じく自転車に乗っていておれよりも先にその場にいた年配の女性の方が振り向いて声をかけてきた 「…〇〇公園ってどこかわかります?」 おれは時々年配の女性から声をかけられる いい人そうに見えているのかなと思うと、常々人からよく思われることを意識している自分としてはなんとなく悪い気はしないのだった 「あーこの道をまっすぐ、ほんとにまっすぐ行くと、左手にあります」と答えたら、おばあさんは「ありがとうございます…」と言って視線を前方にやった 正面の信号が青に変わり、おれはおばあさんを追い抜いて家路を急いだ

急ぎながら、もうちょっとよい伝え方がなかったかなあ…と思った まっすぐ行ったらやがて左手の公園に辿り着くのは本当の本当なんだけど、おばあさんからすれば、もしかしたら、そこに至るまでのただただまっすぐが果てしない道のりかもしれなくて、途中で心が折れて、結局辿り着けないままになってしまう可能性もなくはない おれにとっては自転車でせいぜい5分くらいの距離である しかし、世の中には想像を絶するほど歩みも自転車の進みも遅い人が存在する だとするなら、おれの「せいぜい」という感覚はあくまでどこまでも個人的な「おれにとっては」なものでしかないのだ おばあちゃんのポテンシャルを軽視しているようだけど、なんかそういうのを加味してもう少し丁寧な説明ができたらよかった、って

例えば、その公園が次の信号を超えた先にあることは事実だから、それを伝えられたらよかった それか、どうせ暇なんだし「案内しましょうか?」って言ってみればよかった

おばあちゃんは公園になんの用があったのかなあ 公民館で催しでもあったのかな おばあちゃん、ちゃんと着いたかな まだ自転車に乗っているのかなあ

 

妹は以前寸借詐欺のようなものに遭いかけたという と言っても、当時はそういう行為をする人がいるということは知らなかったらしいのだが、「交番もお金貸してくれなくてねえ…もうどうしたらいいのか……」というおばあさんに対して、ひたすら「ああそうですか……」「そうなんですね…」と気の毒に思いながらも相槌を打っていたら、やがて声をかけてきたおばあさんのほうが「では、失礼します…」と言って去って行ったんだって まじで面白すぎる 直接的に「お金貸してほしい」とは言われなかったみたいだからもしかしたら詐欺ではなかったのかもしれないけど

 

親切に振る舞えることが少ないから、機会さえあれば、できるだけ他人に対して親切に接していきたいなーと思う今日この頃であるが、時として、(状況を考えたうえで)妹のような毅然とした態度をとることも忘れたくはないなーと思っているよ

「今日この頃」おれの言葉じゃなさすぎる

 

ながらく掲示するのを忘れていましたが、おれは今でもお話を待っております ぜひ、聞かせてくださいね

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