争いは

つづく

無題9

現実の諸問題について頭を抱えていたら、すっかり季節は秋になっていて、それもたちまち冬に変わった

この間、大学に行くにあたってのんびり用意をしすぎて、うっかり遅刻してしまった 遅刻と言っても来るべき時間というものが厳密に定められているわけではないのだが、いつも家を出るのが8時40分くらいだとすると、気づいたときには50分を過ぎていたのである 20分ほど家を出るのを遅らせる必要があった 妹に喋りかけすぎてこのようなことになった

9時20分くらいに最寄り駅に着くと、辺りには人がごった返していた 本当はごった返していると言うほどでもなかったが、明らかにいつもより広範囲に渡って人が点在していた あー(察し)

ついさっき発生した人身事故に伴って電車の運転を見合わせているのだった

こういうときのおれは案外落ち着いている 焦ったって仕方がないし、現時点ではとくに焦らなければならないような用事があるわけでもないからである

周りの社会人として働いていそうな人たちは、会社か上司かわからんけど電話をかけたりしていた 学生らしき人は、「〜のため全線運転見合わせ中」と表示されたモニターをスマホのカメラにおさめて、その画像を添付したおそらく講義の担当者あてのメールをポチポチと作成していた おれはその光景を眺めながら、うーむとしていた すると、👨🏻‍✈️「運転再開は11時を予定しています」 まじ〜〜?2時間の空白が突如としてわが眼前に現れたではないか

なので、散歩がてら行けるところまで歩いてみることにした

とりあえず隣の駅まで歩いて、まだダメそうだったらもう一駅分歩こう ということで、散歩スタート 今いる駅のそばにはウォーキングにうってつけな細長く分布した緑地があり、そこをずっと行くことで隣の駅の方までたどり着くことができる 夏場はあまり外に出る気になれなかったので、久々の散歩であった

トコトコトコトコ おじいさんやおばあさんがちらほらと通常の散歩をしている 朝の空気はほんのり冷たくて新しい感じ トコトコトコトコ トコトコトコトコ 気持ち〜人おらねー トコトコトコトコ うわ〜絵画みたいな光景 写真撮っちゃお トコトコトコトコ さわやか~ トコトコトコトコ あ、みなさーん!電車運転見合わせ中ですよ! トコトコトコトコ…てか、秋だ……………… 常緑樹の多い緑地の中で、一部の木の葉が暖色めいているのがわかった そうか、秋か 秋だったんだ なんとなく涼しくなってきたとは思っていたけど 落ち込んだり病んだりして楽しい気持ちじゃなくなったとして、おれは別に世界が灰色に見えるわけではないけど、こういう変化に鈍感になってしまうんだな うーむ トコトコトコトコ うわっ前を歩いてるおじいさんの存在も相まって、すごいいい感じの光景だ!写真撮っちゃお! トコトコトコトコ 着いちゃったなり

一応駅構内まで入ってみたものの、やっぱり電車は止まったままである まだ10時、うーむ………、うーむ………、座ってる人いる…いいな……、うーむ、うーむ………もう一駅行ってみましょか! トコトコ再開の巻

もう一駅先の駅までは歩いたことがなかった とりあえずマップで最短経路を確認しながら行く トコトコトコトコ やっぱり地図見ながらだと発見をしにくい てかめちゃくちゃ住宅街だしな トコトコトコトコ あの前歩いてる人、絶対おれと同じことしてる… トコトコトコトコ トコトコトコトコ トコトコトコトコ トコトコトコトコ うどん屋発見! トコトコトコトコ トコトコトコトコ トコトコトコトコ… あと32分か、まあまああるな トコトコトコトコ トコトコトコトコ 27分!? トコトコトコトコ トコトコトコトコ もう運転再開してたりして… トコトコトコトコ トコトコトコトコ トコトコトコトコ あ、見覚えある景色 トコトコトコ つ・い・た なお、この間においては写真を一枚もとらなかった

おれが駅に到着した時くらいにちょうど運転が再開したようだった いい感じに運動できて時間を潰せて、うれしい気持ちだった

 

大学での作業を済ませ、その日の夕方は好きなやつと会った 待ち合わせたショッピングモールの店内をふたりで適当にうろついて、やがて本屋の前を通ると、店頭?に置かれていたとある雑誌が目に入った おれの住む街の周辺地域に存在する食べ物屋さんなどを特集しているようである 就職と同時に地元を離れることが確定しており、その前にいろいろを堪能しておきたいような気持ちを少しだけ持っているおれは、まんまとそれに興味をひかれてしまった あ、と言いつつ足を止めて本を手に取った 

ペラペラ スパイスカレーおいしそう 食べに行きたいな〜 ペラペラ あ、うどんだ、おいしそう……………てか、「これ今日駅まで歩いてるときに見つけたうどん屋さんや!」「そうなん?」「そうそう〜」 かなりタイムリーである

ひとしきり興奮したあと、また今度行ってみようと独り言みたいに呟いたら、好きなやつはすかさず「俺とな!」と言ってくれた

おれはこういうとき、相手がどうかはわからないからと自己完結的になってしまいがちだが、そんな変な気遣いはやめて素直に誘ってみたほうがいいものだろうか 多分そうだろうな おれは一緒に行くよう言ってもらえてうれしかった だけど、相手はきっと多少は寂しかっただろうな ほんとうにこういうところだよおれは

 

a few days later…

おれはひたすらにZOZOTOWNとにらめっこをしていた 過去形なのは、昨夜ついにカートに入れたものを注文したためである これで現実の問題がまたひとつ解消された 現実のなにか実体的な問題のことばかり考えていたら、手触りのない大事なような感慨のことを自覚する機会や余裕さえなくなってしまう 自分のときめきとか、変化とか そういうのがなにもわからない状態になる そういうのを放っておいているうちに、現実と自分が乖離して、あらゆることに対する態度も雑になってしまいそう 多分なるし、なって る

取り戻してゆきたいよ