争いは

つづく

いらない翼

おれの背中はいま、とても綺麗とは形容できない状態

これは、比喩的なものではなく、まさしく皮膚そのもののことを言っている

 

具体的には、小さなピンクのプツプツ(ニキビのようなもの)の、肩甲骨あたりから肩の峰にかけての分布が確認できている 端的に言えば、荒れている なんらかの炎症を起こしているようである 触るとやや痒い

これに気がついたのは、2月26日 別に記憶しているわけではなくて、あまりの受け入れがたさに即座にツイートを行っており、それを見返したまでである

バイトが終わったあとのこと、寝転びながら、ふと首の後ろのあたりを撫でみると、自分の知らない凹凸に触った 不審に思い、その時家にいた妹と母に見てもらうと、おれの「なんかできてない?」という言葉に対して、両者とも「うわほんまや」と返した 写真を撮ってもらい状態を確認し、自らも(うわほんまや)となりながら、受け入れがたさを吐き出すようにツイートしたのだった

どうして受け入れ難いのか、それは、今までに一度もそのようなことがなかったからだ 

肌の綺麗さだけがおれの取り柄だった 関係ないかもしれないけど、おれは性格は汚いものの肌は割に綺麗で、その事実をもって自分自身を慰めている部分があった だけれど、このたびその唯一ともいえる取り柄が失われてしまった

いまやおれは、ただの性格の悪い人間でしかないのではないか

 

心当たりは、ないような、いや、ないよ?あるとしてもストレスとかホルモンバランスの乱れとかそういうのじゃない?と思いたいが、実は、ある

「水泳の授業の時、女子の背中に毛生えてるの見て無理って思った」 高校生の頃、同じクラスだった男が、自分の周囲の人間に話していたことだ

その周囲の人間の中には女もいて、発言に対して「きしょ!」「最悪」みたいな反応をしていたように記憶している いや本当は覚えてないけど もしかしたらおれの感想を反映させてもうてるかもしれん

おれは、そいつの周囲の人間ではなく、たまたま近くにいただけの存在だった たまたまその話を耳にして、別にそいつのことが好きだったわけでもなかった が、話を聞いてそこそこショックを受けてしまい、以来、おれ自身もうっすらと背中の毛を厭うようになった 気にする人が少しでもいるということを知ってしまうと、おれはどうしても気にしてしまうたちなのだ

このことを、つい最近、自分の背中をまじまじと見つめる機会があり思い出した 気にしてしまうとはいうものの、意識しなければ忘れたままではいられるのに、意識しちゃったんだよな

見つめてわかったのは、自分の背中にも生えているということだった 羽根が(ここからは、あえて羽根ということにします) 立派というものでもない存在感に乏しい羽根であったが、鏡越しで目視できてしまったことで、一気に許せなくなった 翌る日に羽根を除去できるクリーム(一応敏感肌用)を購入 その日のお風呂の時間に、時間をかけて、身体をくねらせながら、必死に背中にクリームを塗りたくった まばらになったので、2、3日経ってまた塗った

おれの背中は、ツルツルになった

その1週間後、おれの背中はプツプツになった

間接的なものかもしれないし、複合的なものであるかもしれないけど、思い当たる原因はこれくらいしかない 背中を綺麗にしようとしたのに、結果的に、前よりもわかりやすく綺麗ではなくなってしまった 自分のことをもっと愛せなくなってしまった クリームのことは全く恨んでない ただただ、自分にとってどうでもいいような人の言葉を信じ、必要のないことを気にして、おかしなことになった自分が、哀れで愚かで憎たらしく感じる

 

いまは気付いた時から1週間と3日目 プツプツの色は濃くなった気がするけど、プツ感が少しずつ小さくなってきた気がしている 一刻もはやくよくなってほしい