争いは

つづく

徒然

大学に向かう際に乗るのは、決まって真ん中あたりの車両 なぜかと言うと、その車両を降りたときの位置がちょうど改札の前になるからだ 最短ルートでいざ参らん! だれもおれの行く道を邪魔をするんじゃない おまえ、改札の前でようやく定期券を取り出すんじゃない なかなか見つからないこと、おれにもあるが

 

先頭か最後尾以外の車両は、車体の左右の側面にしか窓がついておらず、したがって、車内からは左右どちらかの景色しか見ることができない 左右を同時に見るなんてことは少し難しい 実際それを試みたことはないが、難しいのがなんとなくわかる 左右に景色はあっても真ん中はどうしても車内だから、やっぱり車内の様子がちらついてしまうと思うのよ 寄り目にしたらいい感じに左右の景色がつながって見えたりするのかな、いや、それだと真ん中の景色だけが際立つだろうよ 真ん中の車両で左右の景色を同時に見るには、両目玉を相反する方向に向ける必要があるのかも

 

もう4年以上も通っているが、まともに窓の外の景色を楽しむようになったのは一年くらい前からだろうか

慣れ親しんだはずの景色でもじっくり眺めてみると知らないことがたくさんあった この辺家ありすぎだな、林があるな、川があるな、川の上を走ってるんだな、ずっと工事してるな、田舎だな、都会だな、対照的だな、この駅は白っぽくて空港みたいだな、工場がいっぱいだな、田んぼがあるな、おじいさんがいるな、洋裁教室あるな、向こうにお城が見えるな、黄色い電車が走っているな そりゃあ、ただそこを通り過ぎていくことに慣れていただけで、全く親しんでなんかいなかったんだから、当然だ

でもそろそろ慣れ親しめてきたようだ 景色に飽きを感じるようになった 慣れ親しんだなら飽きなんて逆にこないような気もするけども

 

先日、大学に行くにあたって初めて先頭車両に乗った 人がすごくたくさんいて、おれ御用達の車両には乗れそうになかったから

前にもそういうことがあったんです そのときは、あまりの人の多さに茫然自失としてしまい、ついに目当ての電車には乗ることができませんでした 情けなかった まさしくあれは負け犬の遅刻の仕方だった もう二度とそういう失敗はしたくなかったのです

先頭車両からの景色は、真ん中の車両で左右の窓越しに見える景色と同じようで、全く印象が異なっていた 車体前面の窓の存在により、景色は隔てられることなくおおよそひとつなぎの体をなし、2Dと3Dのちょうど狭間の次元にあるような、やや不思議な様相をたたえているのだ

(なお、いうまでもないが、これはおのれが進行方向と同じ方向を向いている場合において眺むことのできるものである)

 


1番の目的は、できるだけ無駄をしでかすことなく、被ることなく、大学まで向かうこと しかし、たまに少しの無駄を許容してみると、いつもとはちょっぴり違うだけの楽しい景色に出会えたりもする

うららかなる気持ちは大事にしたいものだ